神経線維腫症

神経線維腫症Ⅰ型
(レックリングハウゼン病、以下NF1)
について

レックリングハウゼン病とは
どんな病気?

NF1と呼ばれるひとつの遺伝子が正常に働かなくなるために、主に皮膚、骨、神経系に腫瘍や様々な症状が発現します。
典型的には、乳幼児期にカフェオレ斑とよばれる淡い茶色の円形から楕円形の大小のアザが全身にみられ、6箇所以上見られる場合は、この病気である可能性が高くなります。

小児期には注意欠陥多動症や学習障害が見られる場合があります。また骨の異常(手足の長さの差、脊椎の側弯)が成長と共に見られる場合もあります。
青年期からは、皮膚に神経線維腫とよばれる柔らかいできものが出現し増えていきます。

他にも多くの関連する合併症や腫瘍がありますが、1人のレックリングハウゼン病の方に全てが合併するわけではなく、発現する症状の重症度やできる腫瘍には、個人差がとても大きいというのもこの病気の特長です。

診断は?

レックリングハウゼン病には臨床診断基準というものがあり、出現している症状の組み合わせで診断します。
しかしながら8歳未満の乳幼児では臨床診断基準に適合する症状が全て出現していなく、診断がつけられない場合もあります。

遺伝は?

前述した様に、NF1と呼ばれる遺伝子の異常が原因です。遺伝形式は常染色体顕性(優性)遺伝で、父親もしくは母親にこの病気がある場合には、生まれてくる子供は1 / 2の確率でこの病気になります。
しかしレックリングハウゼン病のの約半数の方は「孤発性」と言い、両親共にこの病気が無い方から生まれています。これは3000出生に1人の確率で生まれます。

遺伝子検査は?

遺伝子の病気なので、NF1を調べれば遺伝子診断は可能です。
しかし、NF1は非常に大きな(塩基配列の長い)遺伝子で、塩基配列の変異は1箇所にとどまらず、長い長い遺伝子のいろいろなところにあります。

この病気の遺伝子の異常は非常に多様で、他の遺伝子病の様に1箇所を調べれば病気が診断、確定できるというものではありません。その様な理由で、現在でもNF1の遺伝子検査は、各施設で、未だ研究的、探索的に行われているのみで、一般的には行われていません(保険請求もできません)。

福岡大学病院皮膚科では、現在、倫理審査委員会の承認の下、限られた領域(エクソン領域)に限った遺伝子検査を研究として行っております。検査には本人の受診が必要です。検査についての詳細は担当医に直接、お尋ねください。

カフェオレ斑の治療は?

レーザー治療を行なった報告は多数ありますが、残念ながら現在まで推奨される治療法はありません。
レーザー治療施行後に色が抜けすぎたり、再発してすぐに色が戻ったりする患者さんも多くいるため、福岡大学ではレーザー治療は行っておりません。

神経線維腫の治療は?

神経線維腫は皮膚に疣状に隆起するできもので、レックリングハウゼン病の方には多数出てきます。現時点では、皮膚や皮膚の下にできた小型の腫瘍は、外科的に切除する以外に方法はありません。

皮膚の神経線維腫は、部位や大きさにもよりますが、1−2個程度であれば、外来で切除可能です。局所麻酔を用いて、切除し縫合します。多数の腫瘍をとる場合、福岡大学では入院の上、全身麻酔での手術も行っています。
神経の神経線維腫もしくはびまん性蔓状神経線維腫という特殊な神経線維腫ついては、非常に出血しやすく難しい手術になります。十分に計画を立て、検査などを行った上で入院、手術を検討します。

現在、レックリングハウゼン病の神経線維腫に対する塗り薬や飲み薬の開発のための試験(治験)が行われており、良い結果が得られれば、将来的には、これらの薬剤を使える日が来るかもしれません。

難病指定について

レックリングハウゼン病は、国が指定する指定難病の1つです。
すべての方が対象ではありませんが、全身におよそ1cm以上程度の神経線維腫が1000個以上ある方や麻痺、痛み等の神経症状がある方、軽度ないし中等度の骨病変(手術治療を必要としない脊柱または四肢骨変形)がある方(重症度分類のstage3以上に該当する場合は)、指定医療機関(当科)において臨床調査個人票を作成し、都道府県に必要書類とともに提出し、審査後に承認されれば、医療費助成の対象となります。

詳しくは下記ホームページを閲覧いただき、都道府県の窓口にお問い合わせください。

難病情報センター|神経線維腫症Ⅰ型(指定難病34)

また、レックリングハウゼン病は小児慢性特定疾病にも指定されており、こちらは重症度基準が指定難病のそれと異なります。

小児慢性特定疾病情報センター|レックリングハウゼン病

患者会について

レックリングハウゼン病の患者会のご紹介です。

稀少難病者の会 社会福祉法人 復生あせび会

※当科では現在、患者会を通じた活動などは行っておりません。

レックリングハウゼン病学会について

レックリングハウゼン病の診療には、その症状の多彩さから皮膚科医の他に内科、小児科医、形成外科医、整形外科医、脳外科医、遺伝専門医など多くの医師の連携が肝要です。

しかしながら、まだまだすべての医師に十分に理解されている病気とは言い難い状況です。
レックリングハウゼン病学会では、およそ1年に1度、レックリングハウゼン病の診療に関わるすべての医師が、診療科の垣根を越えて知識を共有すべく講演や発表を行っております。

日本レックリングハウゼン病学会

最後に

福岡大学病院皮膚科では、レックリングハウゼン病の疫学研究(臨床研究)を行っております。
レックリングハウゼン病は、症状の発現に個人差が大きく、全ての患者さんが病院を受診されるとは限りません。

また、症状や出現する腫瘍によっては、有効な治療がないこともあり、次第に受診されなくなる患者さんも少なくありません。
そのためNF1の患者さん全員を対象にすることはできませんが、受診されるレックリングハウゼン病の患者さんが、具体的にどの様なことに困っており、日常生活で何に不便を感じているのか、どの様な合併症があるのか、治療を行う上で、どの様な問題があるのかなど実情を把握し、それらを解決するにはどうしていけば良いのかを考えていきたいと思っております。

来院される患者さんには、アンケート調査などをお願いする場合もあります。
ぜひご理解いただき、ご協力賜れば幸甚に存じます。

2021年 10月